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「はじめまして」。
2009.11.13 (Fri)
「はじめまして」

メールのタイトルは、そう書かれていた。

差出人に心当たりはない。
全く知らない人からのメール。
「はじめまして」も、当然と言えば当然だが。
本文にはこう書かれていた。

「少しお酒控えた方がいいよ」

・・・なんだ、このメール。
ものの5秒で削除した。

次の日。

また同じ人からメール。

「消してもいいけど、覚えていてね。このメール」

・・・薄気味悪い。

次の日。

「タバコもやめてね。地方財政にとっては税収増だけど、わたしにとってはマイナスだから」

・・・火のついたタバコを落としそうになった。
わたしって?

・・・妻か?
いやいや、妻はメールなど一切しない。
というか、使い方を知らないはずだ。

翌日以降、妻を監視するような眼で見るようになった。
当然、怪訝そうに妻に問いつめられた。

「なに?」

もちろん詳細は言えない。
ごまかす他ないのだが、彼女に不審な気配は見られない。

「そろそろわかった?私の正体?」

なんだ、こいつ。
あまりにも挑戦的だ。
頭の中をいろんな女が駆け巡る。
といってもそこまでいろんな経験がある訳ではない。
・・・いや、本当に女か?
勝手に僕がそう思っているだけ?
男?
誰にも相談できず、送られてきたメールを凝視する毎日が続いた。

そして二週間後。

例のメールのタイトルにはこう書かれていた。

「もう一度、はじめまして。」

そして本文。

「これからもよろしくお願いします」

もう一度?
これからも?

あらゆることを考えたが、どこにも結びつかない。
全くわからない。

ただ、このメールが、僕のことを心配していることだけは確かだ。
酒も控えた。タバコもやめた。
誰からともわからないメールに指図されたのが癪にさわるが。
でも、なぜか気持ちはすっきりしていた。

そしてその夜。
仕事から帰ると、妻が一言。

「赤ちゃんができたみたい」

彼女の満面の笑顔の向こう側で、うれしそうに
「わかった?」
と笑っている子供の顔が見えた。

僕は、彼女を抱きしめた。
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